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住職法話集

もう十数年も前のことですが、現代医療を考える、というような会に出席しました。

話が臓器移植のことになって、私は「臓器移植が一部の人たちだけ受けられる、というようなことになってはならない。早くすべての人が受けられるような体制をどうにかして作らねばならない・・・」と発言しました。

すると私の良く知っているK師が、手を上げて「この世にはどうにかなることとどうにもならないことがある。そのうちのどうにもならないことを考えるのが私たち僧侶のありかただと思う」という意味合いの発言がありました。

そのときは『そんなのは一種の敗北主義ではないか』などと一瞬考えてしまいましたが、あとでよく考えるとこの世の中どうにもならないことのほうがよほどたくさんあるのではないか、と思うようになりました。

年老いること、病気になること、死ぬこと、そして自分が自分のように生まれてきたこと、顔もスタイルもまわりの環境も何一つ思い通りにはなりようがありません。

そして私自身の体・特に足が思い通りに動かなくなっていったのも同じ頃だったということも私の気持ちの変化に大きな影響を与えたと思います。それからなんと言っても、どうにかなることを考える人は、たとえば政治家、学者、経済人、そして大部分の一般の人など・・・たくさんいるということに気づきました。だから僧侶としては、その(どうにもならないこと)をどうにもならないなりに一生懸命考えるのがつとめだと決心しました。

これで自分のスタンスが決まりました。そのスタンスにしたがって現在月1回、寺の新聞(久昌通信)を作っています(スタンスというより動機というほうがいいかなあ)。表裏2面だけの新聞です。
(文責:豊岳澄明)